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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第3章 第一話【桜草】 逢いたくて~恋ごころ~

 ユンが少し焦れったそうに言う。
「だから、私とそなたが初めて庭園で出逢った時、そなたが後生大切に抱えていた書物のことだ」
 ああ、と、明姫は漸く合点がいった。
「幸いにも、まだ破けてしまったのは誰にも見つかっていないみたい」
「そうか」
 ユンも彼なりに気にしてくれてはいたのだろう。少し安堵したように頷いた。
 明姫はうなだれた。
「見つかれば、ただでは済まないわ」
 ユンの綺麗に弧を描いた眉が心もちつり上がる。
「まさか。たかだか書物の表紙を破いたくらいで、それほどの大事にはならないだろう? しかも、よくよく注意して見なければ判らない程度のものだ」

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