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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第3章 第一話【桜草】 逢いたくて~恋ごころ~

「ねえ、続きを話して。先が知りたいわ」
「明姫は見かけによらず賢くて聞き上手でもある」
 からかうように言われ、明姫は笑った。
「美しいお妃は心も同様に清らかで優しかった。狭い殿舎の庭にはいつも四季の花々が咲き乱れて行く人の眼を楽しませていたが、中でも彼女がこよなく愛したのが桜草だったという」
 明姫が眼を輝かせた。
「それで、この殿舎の庭園に桜草がたくさん咲いているのね」
「国王さまはお妃が亡くなり、自分が大人になっても、いまだに時々ここに来ているそうだよ。自ら庭の土を耕し、種を蒔いて桜草を育てている。不遇な中で亡くなったお妃の魂をせめて慰めたいと、今でも彼女の愛した桜草をこの庭で育てているんだ」

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