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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第3章 第一話【桜草】 逢いたくて~恋ごころ~

 殿舎をぐるりと囲む回廊から庭へと短い階段が続いている。明姫は階を降りながら、改めて月夜に浮かぶ庭園を眺めた。ささやかな広さだが、桜草がまるで薄紅色の絨毯のように庭の一面を埋めている。
 銀の月にひっそりと照らし出された小さな花たちが光の衣を纏い、淡く銀色に発光しているように見える。愛らしい花なのに、何故かドキリするほど艶めいて見えるのは気のせいだろうか。
「ソルさんの家に持っていった花は、ここで摘んだのね」
「まあ、そういうこと」
「勝手に国王さまのお庭を弄ったりして大丈夫なの? 見つかったら、私が本を傷つけたどころでは済まないかもしれないのに」

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