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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

 流石に表紙のわずかな破損くらいで処刑はないと思うが、やはり見つかれば、鞭打ちは免れないだろう。ここは見つかる前に、崔直宮に報告しておいた方が賢明だろうか。
 明姫があれこれと頭を悩ませている前で、男もまた地面に這いつくばって何やら拾い集めている。
「何をしているの?」
 声をかけると、すぐに返事が返ってきた。
「見てのとおりだ。私も拾いものをしている」
 そのひとことで、明姫は初めて知った。ぶつかった弾みで荷物を落としてしまったのは何も自分だけではないようである。男が拾い集めているのは、地面いっぱいに散らばった桜草であった。傍らに忘れ去られたように、ぽつねんと籠が転がっている。この籠に桜草を入れて運んでいる最中だった?

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