テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

「桜草?」
 今度は返事はない。男はただ黙って花を拾い集めては籠に戻す作業を繰り返していた。
 明姫は唇を噛みしめ、うなだれた。
「ごめんなさい、私ったら、自分のことしか考えられなくて」
 彼女は急いで自分も桜草を拾い始めた。
 男がちらりと明姫を見て、また桜草を拾い続ける。
「そなたのお陰で殆ど元どおりになった」
 男が破顔する。刹那、明姫の胸の鼓動が速くなった。ずば抜けて背が高い男だが、どう見ても逞しいとか精悍という言葉は似合いそうにもない。いかにも苦労知らずに育った両班のお坊ちゃんといった雰囲気である。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ