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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

 明姫は自分で自分を嗤うと、黙って地面に残っていた数本の桜草を拾った。
「これはもう使えないわよね」
 残念そうに眺めていたかと思うと、微笑んだ。
「まだ花のついているものは部屋に持って帰って、水に挿してみるわ。もしかしたら、まだ何日かは眼を楽しませてくれるかもしれないし」
 男が愕いたように眼を見開いた。
「持って帰って活けるというのか、その花を?」
 明姫は当然だというように頷いた。
「ええ。だって、まだ綺麗に咲いているものもあるのに。このまま棄ててしまうのは可哀想でしょ。茎の折れた部分はきれいに取って、水に挿してあげれば、きっと大丈夫よ」

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