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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

 隙を見て鶏肉をかっぱらおうとした幼い子どもが鶏肉屋の主人に捕まり、大目玉を食らっている。キョロキョロといかにも物珍しげに周囲を眺めながら歩いているため、また前方がよく見えていない。
 しまった―と思ったときは遅かった。
 往来を向こうから歩いてきた男とぶつかってしまった。
「申し訳ありません」
 町中なので、外套を頭からすっぽり被って歩いていたのだが、かえって、それが余計に悪目立ちしてしまっていることなど、当人の明姫は気づいていない。当人は目立たない格好をしているつもりなのに、その目立たないはずの格好が逆に人眼をひくというのは、よくあることだ。

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