身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い
今でも時々、夜半の眠りのただ中に見る悪夢、あれは紛れもなく、あの夜の再現だった。真っ赤に燃え盛る焔、黒々とした夜空を不気味なほどに紅く染め上げていた―。その焔は明姫が慣れ親しんだすべてのものを飲み込み、跡形もなく灼き尽くした。優しかった両親、まだ乳飲み子にすぎなかった弟、母の次に大好きだった乳母、誠実に主人のために働いていた大勢の使用人が犠牲となったのだ。
明姫が分別というものを身につける年頃になった時、崔尚宮がこっそりと教えてくれた。亡くなった当時、父は極秘裏に王命で何かを探っていたのだという。それは時の左議政(チャイジョン)という権力者に拘わることであり、左議政は時の王妃―今の大妃の実兄であった。
明姫が分別というものを身につける年頃になった時、崔尚宮がこっそりと教えてくれた。亡くなった当時、父は極秘裏に王命で何かを探っていたのだという。それは時の左議政(チャイジョン)という権力者に拘わることであり、左議政は時の王妃―今の大妃の実兄であった。