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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

 男がグイと顔を近づけると、酒臭い饐えた匂いが鼻についた。思わず吐き気がしそうになり、明姫は顔を背けた。
「へえ、結構可愛い顔をしているではないか。これは良い拾い物をしたかもな。なに、服を汚した詫びは、そなたのこの身体で俺を存分に楽しませてくれれば良い」
「何をするのっ、いやっ」
 更に男の顔が近づき、無遠慮な手が伸びてくる。一度も触られたことのない胸を鷲掴みにされ、不覚にも涙が滲んだ。
 周囲には遠巻きに見物人ができているが、皆、両班の放蕩息子に絡まれては一大事と助けてくれようともしない。元々、庶民と両班では、争いごとになっても、どちらが正しいかで勝敗は決まらない。儒教国の朝鮮では、国王を頂点に頂く特権階級である両班の行いこそがすべて正しいとされる。

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