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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第6章 第二話 【桔梗の涙】 予知夢

 もちろん、今、宝石箱に溢れんばかりのノリゲたちとは比べようもないほどの安物だけれど、明姫にとっては大切な想い出の品であった。
 あの頃は良かったとつくづく思わずにはいられない。ユンが国王であるとは知らず、ただの学者の若者だと信じ込んでいたあの頃に戻れたなら、どんなに幸せなことか。
 誰にも何も言われず、ただの男と女として市井で夫婦として生涯を送れたとしたら、どんなに良いだろう。権力闘争も王の寵愛をめぐって女たちが妍を競うこともなく。

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