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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

 生憎と身体の自由を奪われている今、小刀は使えないけれど、舌をかみ切ることはできる。そう思った、まさにそのときである。
「何をしている!」
 凜とした声音と共に現れたのは、明姫を拘束している男とほぼ同年代に見えた。逆光になっているため、突如として現れた男の貌は定かではない。
「見てのとおりだ。美味しそうな獲物を見つけたので、これから連れて帰るところだ、どうだ、おこぼれが欲しいのなら、貴殿も参れ。俺が十分に愉しんだ後、この娘を好きなようにすれば良い」
「貴様、それでも両班か? そなたのしておることは、町のごろつきと同じだという自覚はあるのか? それに、その娘は見たところ、両班の娘のようではないか」

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