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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

「両親は亡くなったんです。もう九年も前のことですから、気にしないで下さい」
 淡々と返した明姫を、彼が一瞬、痛ましげに見つめた。
「九年前といえば、そなたはまだ―」
「六歳です」
「そんなに幼いときに二親を亡くしたとは」
 男が息を呑んだ。
「それで、女官になったのか?」
「はい。たまたま伯母が女官をしていたものだから、そのつてを頼って見習いとして入りました」
 それ以上は話せない。伯母から固く口止めされているし、万が一、領議政の耳に入っては困るからだ。入宮に入るに当たっての身元調査では、明姫は崔尚宮ではなく、知人の姪ということになっている。

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