テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

 むろん、調べる気になれば、すぐに調べられるだろうし、身元は割れるだろう。しかし、用心のため、敢えて氏素性は明かさず偽の身分を使って入宮したのだ。
「そう、か。幼いときからの女官仕事は辛いことも多かったろう」
 男は納得したというよりは、明姫が辿った重い過去に軽い衝撃を受けたようである。
 二人はいつしか都でもいちばんの目抜き通りに来ていた。
「いらっしゃーい。いらっしゃーい」
 そこここの露店から声が飛んでくる。
「そこのお兄さん、お連れさんに一つ、どうですか? うちの店では、本物の玉(ぎよく)を扱ってるよ。隣のように偽物じゃないからね」
「何だとォ。誰の店のが偽物だって?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ