身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い
この火事で屋敷にいた大半の者が生命を落とした。明姫の他にはたった一人生き残った老齢の執事に背負われ、明姫は生命からがら屋敷を脱出したのだ。
眼を閉じれば今も思い出す、あの無残な光景。火の粉を巻き上げながら燃えていた屋敷の中には父や母、幼い弟がいた。いや、その前に自分がこの眼で見たものをけして忘れはしない。
部屋中に血飛沫が飛び散り、一瞬の中に息絶えた父や母の姿。何か異変を察して泣きわめく赤児の弟の口を塞いだ大きな手。
そう、両親は火事で死んだのではない。焔に飲み込まれる前に殺されたのだ。黒装束に身を包んだ、どこの誰とも知れぬ輩たちが剣を振り上げ、一瞬の中に次々と屋敷の者たちの生命を奪っていった。それから逃れる前、屋敷に火を放ったのだ。
眼を閉じれば今も思い出す、あの無残な光景。火の粉を巻き上げながら燃えていた屋敷の中には父や母、幼い弟がいた。いや、その前に自分がこの眼で見たものをけして忘れはしない。
部屋中に血飛沫が飛び散り、一瞬の中に息絶えた父や母の姿。何か異変を察して泣きわめく赤児の弟の口を塞いだ大きな手。
そう、両親は火事で死んだのではない。焔に飲み込まれる前に殺されたのだ。黒装束に身を包んだ、どこの誰とも知れぬ輩たちが剣を振り上げ、一瞬の中に次々と屋敷の者たちの生命を奪っていった。それから逃れる前、屋敷に火を放ったのだ。