身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い
あの夜の惨事はすべてが仕組まれたものだった。だからこそ、崔尚宮は幼い明姫によくよく言い聞かせた。
―お前はあの夜、何も見なかった、知らなかった。あの日、お前はお祖父さま、お祖母さまの許に遊びにきていたということになっています。ゆえに、くれぐれも軽はずみなことは口にせぬように。
黒装束の賊たちが室に踏み込んできた時、明姫は一緒に眠っていた乳母の機転で衝立の背後に隠された。明姫は物陰で震えながら、乳母の断末魔の悲鳴を聞いた。賊たちが足音も荒く出ていった後、彼女の眼にしたのは部屋中を染めた乳母の血と血まみれで事切れた乳母だった。
―お前はあの夜、何も見なかった、知らなかった。あの日、お前はお祖父さま、お祖母さまの許に遊びにきていたということになっています。ゆえに、くれぐれも軽はずみなことは口にせぬように。
黒装束の賊たちが室に踏み込んできた時、明姫は一緒に眠っていた乳母の機転で衝立の背後に隠された。明姫は物陰で震えながら、乳母の断末魔の悲鳴を聞いた。賊たちが足音も荒く出ていった後、彼女の眼にしたのは部屋中を染めた乳母の血と血まみれで事切れた乳母だった。