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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

「ありがとうございます! 大切にします」
 まだ、礼も言ってなかった。買ってやりたくて買ったのだと言われて、そのまま受け取っていただけだったのだ。
 しかし、突然、大声で叫んだので、男の方は愕いたらしい。
 しばらく眼を瞠っていたが、やがて、弾けるように笑い出した。明姫の頬が紅く染まる。
 男の癖に、よく笑う人だ。もっとも、そういう男の笑顔をこうして見るのは嫌いではない。というより、悔しいけれど、もっと見てみたいと思うほど魅力的に思える。
「突然、耳許で大声を出されたんで、愕いた。うん、でも、そなたが気に入ってくれたのなら、私も嬉しいよ」
 男はまた笑うと、唐突に話題を変えた。

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