身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第10章 第二話 【桔梗の涙】 切ない口づけ(キス)
明姫は懸命に走っている。果てのない漆黒の闇の中を駆けているというのに、何故か前へと全然進まない。
ふと背後を振り返り、悲鳴を上げる。真っ赤に燃え盛る紅蓮の焔が彼女に近づき、今にもすっぽりと飲み込まれようとしている。
ああ、また、いつものあの夢だわ。
夢の中の出来事だと最初から判りきっているのに、怖ろしさに叫び出しそうになってしまう。それも常のことなのだ。
ああ、飲み込まれる!
明姫は固く眼を瞑り、今夜こそは巨大な焔に飲み込まれてしまうのだと覚悟した。不思議なことに、幼い頃から繰り返して見てきた忌まわしい夢ではあるけれど、あの追いかけてくる焔に飲み込まれたことは一度たりともない。
ふと背後を振り返り、悲鳴を上げる。真っ赤に燃え盛る紅蓮の焔が彼女に近づき、今にもすっぽりと飲み込まれようとしている。
ああ、また、いつものあの夢だわ。
夢の中の出来事だと最初から判りきっているのに、怖ろしさに叫び出しそうになってしまう。それも常のことなのだ。
ああ、飲み込まれる!
明姫は固く眼を瞑り、今夜こそは巨大な焔に飲み込まれてしまうのだと覚悟した。不思議なことに、幼い頃から繰り返して見てきた忌まわしい夢ではあるけれど、あの追いかけてくる焔に飲み込まれたことは一度たりともない。