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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第10章 第二話 【桔梗の涙】 切ない口づけ(キス) 

 明姫は壁に背を凭れさせて座り込んで眠っていた。狭い牢内には寝床になる藁すらない。
 十月とはいえ、夜は急に気温が下がる。薄いチマチョゴリだけでは忍び寄る寒さを防げず、明姫は身体を丸めるようにして曲げた膝を両手で抱え顔をその上に伏せていた。
 寒さのあまり、歯がカタカタと鳴りそうで、到底眠るどころではなかったのに、やはり連日の取り調べや何やらで疲れていたのだろう。いつしか知らない間に浅い眠りに落ちていたようである。
 ここは義禁府の牢である。似たような室が狭い廊下を挟んで並んでいるが、連れてこられたときには、既にどの室にも人影は見当たらなかった。

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