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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第2章 第一話 【桜草】 戸惑いと、ときめきと

 戸惑いと、とめきめと

「私は別に大丈夫です」
 夕刻までに宮殿に戻れば良いのであって、まだ昼を回ったばかり。時間はたっぷりある。
 明姫の返事を聞いた男は更に嬉しそうに瞳を輝かせた。
「そう? なら、早速、行こうか」
 男が明姫を連れていったのは、目抜き通りを外れ、かなり歩いた町外れであった。この界隈になると、貧民街というのか、あばらやが結構目立つ。目抜き通りにはまだしも、生活に多少の余裕のある庶民が暮らしているけれど、この辺りには文字どおり、その日を暮らしてゆくのがやっとという有様の人々が生活している。

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