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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第2章 第一話 【桜草】 戸惑いと、ときめきと

 二人のやりとりを側で聞きながら、明姫は自分だけが何か取り残されている気がしてならない。誘われたからといって、何で、のこのこと付いてきたりしたのだろう。
 女やソル老人の態度を見ても、この若い男が相当の身分であろうことは容易く察せられる。好きになっても、端から見込みのない男なのに。
 そこまで考えて、思わず身を固くする。
 私、この名前も知らない男を好きになったの? 歳は今、確か二十一だと言った。まだ本当に若いのだ。
 じゃあ、あの花は―桜草はソル老人ではななく、この美しい女性のために持ってきたのだろうか。そう考えただけで、心が妖しく波立つのは何故なのか。この女が男の持ってきた桜草を嬉々として花瓶に活ける姿を想像しただけで、心がどす黒いものに染まってしまいそうだ。

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