身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い
慌てて両親の部屋を訪れた時、まさに剣が二人の胸を刺し貫き、うす汚い手が幼い弟の口を塞ぐところであった。
衝撃で声すら出なかった。ここで見つかれば、自分もあのように無残に殺されると本能的に悟り、明姫は扉を細く開けたまま零れ落ちる涙はそのままに小さな手で口を押さえ、懸命に嗚咽が洩れるのを防いだ。
泣きながら廊下をさまよっているところ、生命からがら逃げ出した老執事と遭遇し、彼に背負われて逃げ出したのだ。執事はそのときの衝撃のせいもあったのか、それからほどなく病の床につき、亡くなったという。
ほぼあい前後して捕盗庁の長官・副官の屋敷が火事となり、家族、使用人の大半が生命を落とした。そのあまりに不自然な事件は意外にも〝不注意による火事〟とされ、たいした取り調べもなく終わった。
衝撃で声すら出なかった。ここで見つかれば、自分もあのように無残に殺されると本能的に悟り、明姫は扉を細く開けたまま零れ落ちる涙はそのままに小さな手で口を押さえ、懸命に嗚咽が洩れるのを防いだ。
泣きながら廊下をさまよっているところ、生命からがら逃げ出した老執事と遭遇し、彼に背負われて逃げ出したのだ。執事はそのときの衝撃のせいもあったのか、それからほどなく病の床につき、亡くなったという。
ほぼあい前後して捕盗庁の長官・副官の屋敷が火事となり、家族、使用人の大半が生命を落とした。そのあまりに不自然な事件は意外にも〝不注意による火事〟とされ、たいした取り調べもなく終わった。