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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第11章 第二話 【桔梗の涙】 しばらくの別離  

「実は、昨夜、母上さまがおいでになられたのです」
 執務机の向こうには来客用の丸机がある。王妃は当然のように丸机を挟んで王と向かい合った。
「母上が?」
 ユンは露骨に眉を寄せた。普段はよそよそしい妻が初めて自分を訪ねてきたと思えば、やはり嬉しくないことはなかった。だが、いきなり大妃を出されて、その弾んだ心も見る間に萎んだ。
 気の強い女にしては珍しく、王妃は少しの逡巡を見せた。
「殿下、私は持って回った物言いは苦手です。ゆえに、単刀直入に申し上げます」
 覚悟を決めたようにひと息に言う。

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