身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第11章 第二話 【桔梗の涙】 しばらくの別離
「そう」
明姫は頷き、まだ仕上げていない刺繍を眺めた。昨夜、刺繍をしていたら、ユンが来たのだ。刺繍は額に填ったままで、部屋の片隅に立てかけてある。
昨夜はあれほど華やかに見えた二匹の蝶と桔梗が一夜明けた今では、どこか物哀しく見えた。
最後に顔を見ることも叶わなかった。でも、きっと、これで良いのだ。名残はどれだけ一緒にいたとしても、尽きることはないだろう。それに、顔を見れば、余計に辛くなるだけ。ならば、このまま顔を見ずに別れた方が良い。
そう思う傍ら、〝さよなら〟も言わずに彼の許を去ってゆくのかと考えると、涙が溢れて止まらなかった。
明姫は頷き、まだ仕上げていない刺繍を眺めた。昨夜、刺繍をしていたら、ユンが来たのだ。刺繍は額に填ったままで、部屋の片隅に立てかけてある。
昨夜はあれほど華やかに見えた二匹の蝶と桔梗が一夜明けた今では、どこか物哀しく見えた。
最後に顔を見ることも叶わなかった。でも、きっと、これで良いのだ。名残はどれだけ一緒にいたとしても、尽きることはないだろう。それに、顔を見れば、余計に辛くなるだけ。ならば、このまま顔を見ずに別れた方が良い。
そう思う傍ら、〝さよなら〟も言わずに彼の許を去ってゆくのかと考えると、涙が溢れて止まらなかった。