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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第11章 第二話 【桔梗の涙】 しばらくの別離  

 明姫はなるべく人眼に触れないよう、昼間は与えられた室で写経などをして過ごした。時には寺男の妻を手伝い、料理をしたり繕い物もする。たまに境内で若い僧にすれ違うと、彼等は一様に美しく若い娘に眩しげな一瞥をくれた。
 ここまで来て色恋沙汰で苦しみたくない。明姫はできるだけ、彼等との接触は避けている。
 小高い山の頂上に位置するこの寺には、都から時折両班の奥方が娘と共に供養に来たり、ふもとの村人たちがお参りにきたりする。それ以外は訪れる者とていない静かな寺である。

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