夢で逢えたなら~後宮秘談~
第2章 揺れる、心
張剣羅(チヤンカンナ)と名乗る若い女官が少年王に突如として斬りかかるという怖ろしい事件だった。その時、王は大勢の伴を引き連れ、宮廷内を移動している最中であった。広大な宮殿の敷地を移動する際、王には常にあまたの伴人が付き従う。緋色の天蓋を掲げた内官がしずしずと脇に付き添い、尚宮、内官、女官総勢十数名で動くのだ。大勢の伴人はいわば、国王の護衛でもあった。
その行列の後方にいたまだ若い女官が突然、前に躍り出て王に懐剣の切っ先を突き立てたのだが、少年の王は鮮やかな動きでそれを巧みに交わし、弾き飛ばされた懐剣は宙に飛んだ。逃げようとしたところを女官はすぐ傍にいた内官を質に取り、拾い上げた懐剣をその皺首に突きつけたのである。
その行列の後方にいたまだ若い女官が突然、前に躍り出て王に懐剣の切っ先を突き立てたのだが、少年の王は鮮やかな動きでそれを巧みに交わし、弾き飛ばされた懐剣は宙に飛んだ。逃げようとしたところを女官はすぐ傍にいた内官を質に取り、拾い上げた懐剣をその皺首に突きつけたのである。