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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 その老内侍は王が〝爺〟と呼んで祖父のように慕っていた内官だった。王が幼少時の守役だったのだ。
―爺を離せ!
 王はじりじりと女官に近づきながら、ひそかに老内侍と女官の後方にいる若い内官たちに目配せした。女官の立ち位置からは、真後ろは死角になっている。
―少しでも動けば、この爺ィの首が吹っ飛ぶぞ。
 女官が女とは思えないドスの利いた低い声で叫ぶ。
 最早、この女官が実は男なのは明らかだった。まんまと変装して女官になりすましていたのだ。

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