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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 王は去ってゆく百花の後ろ姿を茫然と見送るしかない。
 あの娘はいつも自分を見ると、怯えた野兎のように駆け去ってゆく。
 まるで、王自身が獲物を追いつめる狩人にでもなったような気分だ。
 何故だろう、あの娘を見ると、不思議に心の奥がざわめくのは。あの娘が自分を見ると、あの大きな黒い瞳に愕きと警戒心しか浮かべないのは。
 別にどうということはない小娘だ。彼は今まで大勢の美しい女性に囲まれてきた。祖母である大王大妃を初め、彼が六歳のときに亡くなった母仁徳王后もまた影は薄いが、芙蓉の花を思わせる儚げな美人だった。

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