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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 それでも、あの娘は細腕で実際に山のような洗濯物も皿も持って見せたのだ。
「そんなことは、とっくに知っているさ」
 王は独りごちると、ふと真顔になった。
 深い、深い溜息を一つ吐き出してみる。それでも、鉛を呑み込んだように重い心は一向に軽くはならなかった。
 空しい。途方もなく空しかった。幾ら言葉を重ねても、あの娘には届かない。最初から嫌われているのかどうかは判らないが、あの女官は初めて出逢った半月前のあの日から、彼に距離を置こうとしている。

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