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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 その時、彼は唐突に気付いた。
 そう、あの瞳だ。力を秘めた、あの瞳。相手が国王であろうと、けして怯むことなく真っすぐに彼を見つめてくるあのまなざしに自分は強く魅せられたのだ。半月前、洗濯物の山を〝よいしょ〟と声をかけながら持ち上げた彼女を見た時、理由もなく声をかけたくなった。
 彼は基本的に大勢の伴に付き従われて移動するのは好きではない。しかし、国王という体面上、そうせざるを得ないから、しているだけだ。たまに内官たちの眼を眩まし、一人でふらりと広い王宮内を散策することがあった。そんな時、偶然、あの娘を見かけたのだ。

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