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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 もちろん、あのときはまだ彼女は彼が王であることに気付いてはいなかっただろう。彼女の言動や立ち位置が逆光になっていたことからして、最初、彼女は彼が内官だと勘違いしたようだ。
 王の耳奥で折々の愼女官の言葉が甦っては消えていった。
―確かに私のような下級女官は至高の位におわす殿下にとっては虫けらに等しいのかもしれません。でも、私だって同じ人間なんです!
 一生懸命、何時間もかかってやっと洗ったばかりの洗濯物をこんな風に台無しにされて、それでちゃんと謝りもせずにからかってくるだなんて、酷いんじゃありませんか!?

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