夢で逢えたなら~後宮秘談~
第2章 揺れる、心
美しさだけでいえば、あの娘は側室たちには劣るかしれないが、けして六人の側室たちにはない強さを持っている。王にはそれがとても好ましく思える。他人を妬むこともなく、むしろ自分の身より他人を思いやるような娘だ。心優しく、強い。しなやかな強さとでも言えば良いのだろうか。心映えの良さが外見に滲み出て、十人並みの器量をそれ以上に魅力的に見せていることに、あの娘は気付いているのだろうか。
否。あの娘になら、嫉妬されてみても良いかもしれないとさえ思う。可愛い顔で花のような薄紅色の唇を拗ねたように尖らせ、
―私だけとお約束下さい。
黒曜石のように煌めく眼を潤ませて懇願させたら、どんな気分になるだろう。
否。あの娘になら、嫉妬されてみても良いかもしれないとさえ思う。可愛い顔で花のような薄紅色の唇を拗ねたように尖らせ、
―私だけとお約束下さい。
黒曜石のように煌めく眼を潤ませて懇願させたら、どんな気分になるだろう。