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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 思わず拳を振り上げた男の前に娘を守るように立ちはだかり、父は頭を下げた。
―済まない。まだほんの子どもで、何も判っちゃいないんだ。このとおりだ、許してやってくれ。金の方は三日以内には必ず何とか工面するから。
―三日も待てない。もう一ヵ月以上も支払いが滞ってるんだ。明日中には片をつけてくれ。
 男は荒々しい物音を立てて扉を閉めて帰っていった。
 父が自ら首を括って死んだのは、その翌朝だった。男が鼻息も荒く帰っていってから、父はいつになく思いつめた表情で出かけてゆき、夕飯時分にも帰らなかった。やっと帰ってきたのは真夜中も過ぎた頃で、ひどく疲れた顔をしていたように憶えている。

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