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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 そう、確かに父はお人好しだった。底抜けに人が好くて、他人を疑うことを知らず、優しかった。その優しさが父を極限状態にまで追いつめ、殺したのだ。
 ただ人が好いだけなんて、この苛酷な世の中を生きてゆく上で何の意味もない。
―人が好いのも度を越せば、単なる馬鹿と同じじゃないか。
 仲買人の男が去り際に放ったあのひと言が七歳の百花の耳から離れなかった。どれだけ多くの人が父の哀れな死のために滂沱の涙を流してくれても、父は二度と生き返りはしないのだ。

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