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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 そして、時は流れ、人はいつしか父を忘れるだろう。父が彼らのために無償で高価な薬を惜しげもなく分け与えてやったことなど、なかったかのように忘れ果て、自分の人生を生きるのに懸命になるだろう。
 それはそれで良い。生きている限り、人間は我が身のことで手一杯なのだから。
 殊に、ただの庶民にすぎない百花と同じ身分に属する人々は他人のこと―しかも幾ら恩義を受けたとはいえ既に亡くなった者にまで、いつまでも想いを馳せているゆとりはない。

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