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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 それは致し方のないことなのだ。国王を頂点とするこの(朝)国(鮮)の社会は両班(ヤンバン)と呼ばれる貴族階級、更にその下に一般市民(良民(ヤンミン)、または常民(サンミン)とも呼ばれる)、最下層には賤民(チヨンミン)と呼ばれる身分がきっちりと決められている。賤民は文字どおり、支配階級である両班に隷属する奴婢であり、金であたかも獣のように売り買いされる。
 朝鮮では賤民は〝獣の血よりも劣り、汚らわしい〟とされ、徹底的に蔑みの対象とされた。
 働き手を失った一家の生活は次第に切迫していった。元々、豊かではなかった内証は更に苦しくなり、母は内職の仕立物を必死でこなしたが、限界があった。

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