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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第3章 結ばれる

「お鎮まりなさいませ」
 提調尚宮が鹿爪らしい面持ちで言い、崔尚宮がささっと近寄り、耳許で囁く。
「何事も殿下の御意に従うのですよ。けして逆らってはならぬ」
 百花は頷くと、寝所の扉の前に立つ。
 両開きの扉が外側から音もなく開けられたが、どうしても脚を前に踏み出せない。まるで身体全体が石と化してしまったかのように動かなかった。
「どうしたのですか、殿下がお待ちかねですよ」
 提調尚宮が急かすように促し、背中を強く押された。百花はよろけるように前へと一歩進み、うなだれた。

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