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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 百花は自ら望んで女官として王宮に上がると母に言ったのだ。女官になれば、実家に定期的に米の支給がある。加えて、母が百花を育てるために懸命に働く必要もなくなり、結果として母は楽になる。
 七歳の百花が〝女官になる〟と告げた時、母は絶句した。ややあって、
―そんな、お前。
 そう、ひと言、やっとの想いで口にしたようだった。
―私は自分の娘を女官に上げてまで、自分が楽をしたいとはこれっぽっちも思わないんだよ。
 涙声で言う母に、百花は黒い円らな瞳を向けた。

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