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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

―私は大きくなったら、尚(サン)宮(グン)さま(マーマ)になるの。そうしたら、お母さん(オモニ)にも一杯一杯、楽をさせてあげる。綺麗な着物(チマチヨゴリ)に美味しい食べ物―両班の奥さまのような暮らしをさせてあげられるもの。
 黒い瞳を輝かせて生き生きと未来の夢を語る幼い娘を、母は眼を潤ませて眺めていた。
 百花が女官として王宮に上がるために家を出るその日まで、〝いやなら、無理しなくて良い。お前はずっと家にいれば良いんだよ〟と言い続けた。
 あれから、九年が経った。女官見習いから正式な女官となるまでには辛いこともたくさんあったけれど、女官になったことは一度たりとも後悔していない。たまに暇を頂いて実家に帰ったときには、母に美しい布や美味しい菓子を土産に携えてゆく。

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