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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 女官でなければ、十六歳の娘では到底求められないような高価な品々を買えるのも、ずっと王宮で堪えてきたからだ。
 百花は愚かな娘ではない。自分がかなりの努力をしなければ、尚宮になれないのもよく判っている。何しろ、百花とくれば生まれつき機転がきかないし、すぐにボウッと夢の世界に浸ってしまうものだから、あまたの女官を監督する尚宮の立場には器としてはふさわしいとはいえない。
 それでも、〝どんなに不可能だと思えることでも、強く願って努力を続けていれば、いつか必ず夢は叶うものさ〟という母の言葉をいつも宝物として心の底に大切にしまっていた。

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