テキストサイズ

夢で逢えたなら~後宮秘談~

第4章 愛撫

 何も感じていないはずはないのに、見過ごしていることが不気味といえば、かえって不気味であった。
 季節はいつしか春から夏にうつろっている。数日前から聞こえ始めた蝉の声が遠くから響いてきて、じっとしているだけでも、じっとりと汗が流れる。
 とりあえず王の執務室の前の廊下が終わった。百花は汚れた雑巾を盥で丁寧に洗い、立ち上がる。その刹那、腰から下半身にかけて鋭い痛みが走り、思わず痛みに声を上げてしまう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ