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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第4章 愛撫

「愼尚宮」
「監察尚宮さま」
 百花は深々と頭を下げた。この女人はかつて王の乳母を務めていたという。後宮中の女官から畏怖されている謹厳な提調尚宮とも、崔尚宮のように己の保身しか頭にない狭量な人とも違う。
 むしろ、部下の失敗でも自らが責任を取るような、そんな懐の深くて大きな人だ。その分、監察尚宮を慕う若い女官は多く、百花もこの女性をひそかに尊敬していた。
「どうしたのですか? どこか具合でも悪いの?」
 優しく問われ、百花は迂闊にも泣きそうになった。

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