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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第5章 妖婦

「はい、お薬。これだけはきちんと呑んでよね」
 百花は渋々湯呑みを受け取るも、中の茶色い液体を見て、露骨に顔をしかめた。
「いやだ。どうして、こんな苦いものを呑まなくちゃ駄目なのかしら」
 昌淑が百花を軽く睨んだ。
「なに、子どもみたいなことを言ってるの。病気のときには、ちゃんとお薬を飲んで治さなくちゃいけないでしょ」
 それでも百花が渋っていると、昌淑は笑った。
「本当にもう、世話の焼ける尚(マ)宮さま(ーマ)なんだから」
 と、匙で薬湯を掬い、百花の口許に持ってくる。

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