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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第5章 妖婦

 身分そのものは低いとされたが、王だけでなく大臣たちの屋敷にも招かれて宴に花を添えたため、一種特別な存在と見なされていた。
 十八歳の王は、その官妓たちを周囲に侍らせ、毎日呑めや歌えやの乱痴気騒ぎを繰り返している。民草の窮状を誰よりも憂え、質素を重んじていたあの英邁な王と同一人物とは思えない変貌ぶりであった。
 その中でひそかに囁かれたのは、妓生林(イム)采(チェ)順(スン)の容貌が王の愛妾愼尚宮に生き写しである―という噂だった。そして采順はは今や王のお気に入りとなり、かつての燕山君の側室となった張緑水のように後宮に迎えられるのではとまで言われている。

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