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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第5章 妖婦

 王の熱愛する愼尚宮は〝氷の女〟と呼ばれていた。〝王がどれだけ機嫌を取っても、微笑まない〟といわれた。それゆえ、王に一向に靡かぬ愼尚宮の代わりに采順を寵愛しているのだとも。
 王は愼尚宮に籠絡されてしまっており、腑抜け状態になっている。何があっても微笑まない彼女を王が何とか笑わせようと、彼女の部屋を一杯の宝玉で満たしたところ、それでも愼尚宮の冬の月のように冷ややかな美貌には、春風は吹かず微笑みは浮かばなかった―。などと、実に事実無根の噂が巷で流れた。

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