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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第5章 妖婦

 尚薬はもう五十にさしかかろうという初老の男で、いつもむっつりと黙り込んで愛想の悪さには定評がある。その一方、医者として腕の方も確かだという認識もあった。
 尚薬は百花を丁寧に診察した後、
「おめでうございます、ご懐妊です」
 実に淡々と告げた。
 この医者によれば、昌淑の言ったように、百花の場合は極めて珍しい例だと語った。
「一般の妊婦であれば、もうとっくに悪阻は終わっている時期ですな。五月(いつつき)にもなって悪阻が始まるというのも初めて見ました」

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