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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第5章 妖婦

「この子が殺される―?」
 百花はそっと自分の腹部に手を添えた。既にややふっくらと丸みを帯びた腹は、確かにそこに赤児がいるのだと感じさせる。
「しっかりして。あなたが死ぬということは、お腹の赤ちゃんも一緒に死ぬということなのよ。弱音なんて吐いている場合じゃないでしょう。母親ならもっと強くなって、自分と子どもを守らなくては」
 母親(オモニ)。その言葉に、百花は一瞬、胸が熱くなった。実家の母の面影が瞼に浮かんで、消えてゆく。

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