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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第5章 妖婦

 しっかり者の母は、優しいけれど人の好いだけの父を常に支えながら、薬屋を切り盛りしてきた。母の作るキムチが、百花は子どもの頃から大好物だった。今もたまに宿下がりする度に、母は大量のキムチを土産に持たせてくれる。
 親許を離れ女官になったことに後悔はないけれど、母の作ったキムチをひと口食べると、じんわりと涙が込み上げてくることがあった。百花にとって、母とは強くて逞しくて頼りがいがあって、―笑顔の似合う優しい女(ひと)だ。

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