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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第6章 鷺草~真実の愛~

 這いつくばって一生懸命磨いているところに、向こうから複数の脚音が聞こえてくる。
 数人の内官を従えた導宗が歩いてくる。
 百花は脇へ寄ると、頭を深く垂れた。国王に対する礼である。
 王が百花の前を丁度通り過ぎようとしたまさにその時、無骨な手がスと差し出された。
 愕いて顔を上げると、王が無表情に立っている。感情の読めない顔で見下ろす王を、百花は戸惑って見上げた。
 深く翳りを帯びて今にも何らかの感情を溢れさせようとしている瞳を見ていると、心が素手で鷲掴みにされたような気がした。

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