
夢で逢えたなら~後宮秘談~
第6章 鷺草~真実の愛~
今、百花は王の好きだという鷺草の群れ咲く場所に佇んでいた。鷺草の群れ咲く野の向こうには鏡面のような池がひろがり、満々と水を湛えている。人工の池らしいが、到底、人の手になるものとは思えない巨大さだ。
水面を渡る風が百花の額にかかったほつれ毛を揺らしてゆく。池の傍にいるせいか、八月にしては涼しく、先刻までのうんざりするような暑さが嘘のようだ。
ふいに百花の耳奥でいつか楊尚宮に言われた科白が甦った。
―どうか、あなただけは殿下のお淋しさを理解して差し上げて、殿下のお心の支えとなって下さいね。
水面を渡る風が百花の額にかかったほつれ毛を揺らしてゆく。池の傍にいるせいか、八月にしては涼しく、先刻までのうんざりするような暑さが嘘のようだ。
ふいに百花の耳奥でいつか楊尚宮に言われた科白が甦った。
―どうか、あなただけは殿下のお淋しさを理解して差し上げて、殿下のお心の支えとなって下さいね。
