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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第6章 鷺草~真実の愛~

 夕刻の風が池面を吹き渡ってゆく。
 そろそろ長い夏の陽も傾く時間だ。巨(おお)きな太陽が西の空の端を煌々と焔の色に染め上げている。どこに帰るのか、群れをなした鳥の一群が家路を急ぐように頭上を通り過ぎていった。
 寄り添い合うように群れをなした鳥たちの影は残像となって、長く百花の瞼に残った。
 自分はあの方の何を見ていたのか。
 取り返しのつかない愚かな過ちを犯してしまったのではないだろうか。
蜜色の夕陽に照らされた百花の横顔は、涙に濡れていた。

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